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遺言書:遺言書があれば、絶対に安心なのか?【遺留分についてわかりやすく解説】

医療機器メーカー勤務時代の元同僚(40代から50代)と久しぶりに集まりました。行政書士試験合格報告のLINEをした際には、わざわざ電話をくれて自分のことのように喜び独立を応援してくれている大切な方達です。近況報告で仕事の話から遺言書作成の話題になりました。なんと全員がすぐにでも遺言書を書きたいと考えているとのことでした。

「兄弟ではなく恋人に財産を残したい」「法定相続人ではないお世話になった人にいくらか渡したい」「親戚が若くして突然の交通事故で亡くなり、家族が困った」など個々の事情がありました。
次のような遺言書の疑問点に回答しましたので、こちらで詳しく解説します。

  • 遺言書さえ書いておけば、絶対にその通りに配分してもらえるのか?
  • せっかく用意したのに、無効になったら困る。
  • 法定相続の方が優先されるのでは?

■遺言書を書いたら、必ずその通り実現される?

まず、遺言書の効果が発揮されるのは、自分が亡くなった後です。その場に自分はいません。
そして一番重要なのは、遺言書に書いた内容が実現されるかどうかです。
遺言書に書いた相手へ指定した財産が渡ってはじめて実現された、ということになります。
遺言書を書いた効果が、ここで発揮されるのです。

もし、実現をさまたげる可能性を考えるとしたら、「遺留分(いりゅうぶん)」の存在です。
遺言書関連の書籍などに必ず出てきますので、目にしたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のメンバーの中でも、3分の1の人が知っていました。

【遺留分とは】

同僚との会話にもありましたが、遺言書を書くことで相続人以外の人に遺贈(いぞう)することも可能です。
ただしその遺言書に従うと、本来遺産を受け継ぐ権利のある人が全く受け取れなくなってしまうことが生じます。

そこで民法では、遺族の法定相続人としての権利や利益を守るため最低限度受け取れる相続分として「遺留分」を規定しています。
遺言書には書かれていなくても、最低限の金額を自分に渡すよう主張することができます。

その最低限の金額=「遺留分」です。
遺留分請求権があるのは、配偶者・直系卑属(子・孫・ひ孫など)・直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など)のみです。

請求できる額は遺産全体の2分の1、直系尊属のみの場合には3分の1です。
複数の相続人がいる場合には、それぞれの法定相続分に対し2分の1となります。

例:〇〇が配偶者の場合
「〇〇に全ての財産を相続させる」という遺言があったとします。

配偶者と子供が2人いるご家庭の場合、法定相続分の2分の1が遺留分となります。

配偶者の法定相続分は2分の1、子供2人も2分の1(1人4分の1)です。
配偶者は4分の1、子供も4分の1(1人8分の1)を遺留分として遺留分侵害額請求することが可能です。
上記の場合には、子ども1人につき8分の1を遺留分として主張できます。

ちなみに兄弟姉妹には遺留分請求権がありません。
したがって子供がおらず、配偶者と兄弟姉妹しかいない場合、上記のような遺言書があれば遺言書通りの分配が実現可能です。

【遺留分侵害額請求】

相続が開始したこと及び遺留分を侵害する遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知った時から、1年以内に請求する必要があります。
知った時から1年以内に申し出なかった場合、その権利はなくなります。
知らなくても、相続開始から10年が経過すると、時効により請求権自体が消滅します。
ただし、争いを避けるためにも出来れば遺留分に考慮した遺言書を作成しておくべきだと考えます。

■無効になったら困る

せっかく作成したのに、無効になるのは避けたいです。
自筆証書遺言書の場合、方式に従っていないなどで無効になるリスクが高いですが、
一番多いのは、作成時点での意思能力が問われるケースと言われています。

公正証書遺言の場合、作成時に公証人が意思能力の確認を行いますので安心です。
ただし公正証書遺言でも、一部無効になるケースがあります。

例えば遺言書に書いた人が遺言者よりも先に亡くなった場合、その部分については無効となり、遺産分割協議が必要になってしまいます。
対策として「予備的遺言」というものがあります。
Aが遺言者と同時又は先に死亡した際には、Bに・・などと遺言書の中で指定することが可能です。

■法定相続の方が優先される?

法定相続よりも遺言書があれば遺言書が優先されます。
ただし、もし相続人全員の同意があれば、遺言書があっても、遺言書とは異なる分配方法にすることも可能です。
その場合には、相続人全員が集まり遺産分割協議・協議書作成が必要となります。

■まとめ

意思能力があるうちの用意が必要だと浸透してきたため、心身が元気な今のうちに書かなくてはと考える人が増えているように感じます。そのほか、特定の大切な方に残したいまたは残された家族に迷惑をかけたくないという強い意思を持っている。年齢に関わらず、自分の未来をしっかり考えて行動に出る方が増えているという印象です。とても前向きな理由で、素晴らしいことです。

いかがでしょうか。自分がいざ残そうと思った際には、現実的な疑問がいくつも浮かんできます。調べれば調べるほどわからなくなってしまうものです。
自分自身の生活をより大切にしたいと思う方ほど、思い立ったら早めにご相談下さる傾向にあります。

 

どうぞお気軽に、当行政書士事務所へご相談ください。

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